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その他報告 レポート
過去に行なわれたファイナルステージを考える会以外の活動の報告です。
癌性疼痛の最前線  まとめ
■開催日 2016年3月26日(土)
■場所  エルガーラオフィス6階『久留米大学福岡サテライトルーム』
■講師  清水クリニック院長  清水大一郎さん

♪3月の拡大定例会の報告をいたします。
平成27年度まとめの定例会は、「がん性疼痛の最前線」と言うテーマで、当会世話人でもあり清水クリニック院長の清水大一郎さんに講演していただきました。
1.患者さんの不安と誤解、2.疼痛治療の実態、3.がんの痛みを和らげる方法、4.賢い患者になるために、の四つの事をわかりやすくご教示いただきました。
始めに、がんの痛みは罹患した患者さんすべてに生じない(75%)、その痛みに対して、今の日本の除痛率は参加者が思っているより低い(50〜60%)ことを示されました。
次は、がんの痛みに対する患者さんの不安と誤解についてのお話でした。(スライド@参照) がんの痛みは我慢するもの、痛みを訴える事は治療の妨げになると考えている方が半数いると言う調査を示されました。その結果も踏まえ、モルヒネで総称されるオピオイド薬に対する患者さんの不安や誤解を丁寧に解いていただきました。痛みを我慢する事は、身体の消耗になるばかりでなく正確な病状の判断の妨げになるそうです。オピオイド薬を上手に使用すれば、中毒になったり命を縮めたり、意識がなくなったりすることは決してないと断言されました。
そして疼痛治療の実態としてスライドを提示しながら、日本の疼痛治療がまだまだ適正に行われていない事を強調されました。(スライドA参照)そしてその実態に呼応するように、日本の医療施設での除痛率が国際水準に届いていない事を説明されました。二十年以上もがんの患者さんのペインコントロールに邁進されている先生からの忸怩たる思いを感じる瞬間でした。
三番目のお話は、がんの痛みを和らげる方法でした(スライドB参照)。本講演で清水先生が最も強調されたのはがんの痛みの種類と部位・性質を知って欲しいと言う事でした。(スライドC参照) 痛みは大きく分けると、体性痛・内臓痛・神経障害性疼痛に分かれる。その性質を見極めるとその痛みに対応する投薬が出来、除痛につながる。その際患者さんがその痛みをどのように表現しているかがすべての鍵になるとのことでした。事例として、内臓痛を『満腹感』と表現した患者さんを示され、痛みとして表現されなくても、医療者が痛みの性質を精緻することでアセスメントは可能だとはっきり言われました。そして各治療薬を写真付きでわかりやすく提示していただきました。
休憩を挟んで後半は、『患者と医師の「痛み」対談」というユニークな痛みの語りでした。清水先生のペインクリニックで最も難渋した痛みを持つ患者さん、実は当会を立ち上げた故小山ムツコさんだったのです。亡くなった小山さんを、当会世話人の谷岡ゆみ子さんに模擬患者として登場してもらい、語りが始りました。五十代になっていた小山さんは、路上で腰骨を骨折し救急車で入院します。右乳がん切除後5年目の右腸骨転移でした。そして抗がん剤も受けずに退院します。彼女の痛みは複雑で、特にオピオイド薬が効きにくい痛みを数種類持っていたようです。清水先生は、ひりひりズンズン、ズキズキ、ズワーン、「金属バットで殴られたような」「熱く鋭いものですれ違いざまに刺されたような」といった小山さんの多彩な表現の痛みの語りから、神経障害性疼痛だと判断し鎮痛補助薬を併用するよう提案します。また、西洋医学ではコントロールが十分でないと考えられ、漢方薬や鍼灸もトライされます。お二人の痛みの語りを、参加者一同前半で教えてもらったがんの痛みの種類と部位・性質の配布資料を参照しながら聞き入っていました。
語りの最後で小山さんは言います。「言葉の表現も大事だけれど、医師は患者の言葉ばかりではなく、全体の様子も観察してほしい。カルテや検査結果ばかり読んでいて、患者が入ってきても全然こちらを見ない医師もいる。患者がどこをかばいながら歩いてきて、身体をねじらないようにじわじわ座って、という様子の中に最初の情報はある。患者が自分の痛みを上手に表現する訓練をすことと、医師が注意深く観察することの両方が大切だと思う。」
最後に、清水先生は賢い患者になるためにと以下のようにまとめられました。「痛み」という情報は、患者さんの訴えが、その原因の診断や治療方針の糸口になります。最小限、1.痛みの部位、2.痛みの性質、3.痛みの強さの三点は診察時に伝えて頂きたいです。
もう一つは、「患者に痛いですか」と質問しても、あまり痛くないけど「痛いです」と返答される場合が多々あります。私たちが知りたいのは10の痛みが5になったとか、10の痛みが2になったとかです。この情報が現在使っている鎮痛薬が適正・適量なのか、薬を変更するかの指針となります。
がんの痛みを早く緩和するには医療者・患者・家族とのコミュニケーションにかかっていると思います。痛みは患者さんが痛いといえば痛いのです。
がんの痛みについてたくさん学ぶことができた定例会でした。


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