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その他報告 レポート
過去に行なわれたファイナルステージを考える会以外の活動の報告です。
末期がん患者さんの「こころのケア」
■開催日 2015年6月13日(土)
■場所  エルガーラオフィス6階『久留米大学福岡サテライトルーム』
■講師  小倉記念病院 緩和ケア・精神科部長 三木浩司先生


♪6月の拡大定例会の報告をいたします。
小倉記念病院緩和ケア・精神科部長、久留米大学医学部精神神経医学科准教授の三木浩司先生に“末期がん患者さんの「こころのケア」”で講演していただきました。
近年がんに対する国の取り組みは、「がん対策基本法」が制定されたことで進みました。そして、がん患者さんの痛みや気持ちのつらさ、症状コントロールが積極的に取り組まれるようになったそうです。前半は、その一つとして医師教育では、サイコオンコロジー会の「PEACE」という教育システムを紹介していただきました。患者の精神症状、気持ちのつらさについては、1.気持ちのつらさの評価、2.気持ちのつらさに対するケア、3.気持ちのつらさに対する薬物療法、4.専門家へのコンサルテーションがその内容です。以下にまとめます。
1.気持ちのつらさとは、幅広い概念であり、感情面における不快な体験全般を含み、主たるものとして抑うつ・不安がある。
2.気持ちのつらさの医学的要因は、進行・再発がんである、痛みなどの身体症状コントロールが不十分、全身状態が悪いことである。
3.気持ちのつらさの個人・社会的要因は、相対的に若年者、神経質な生活・うつ病などの精神疾患の既往歴がある、社会的サポートが乏しい(独居など)、教育歴が短い等。
4.患者は、「つらい」と言うことが難しい。しかし医療者が「つらいですか」聞くと「つらい」と言いやすい。
5.患者は、「手助けがいります」とは言えない。よって医療者が「手助けがいりますか」と聞くことは大事。
6.抗不安薬は15分で評価(効果判定)できる。長くて3日間である。
抗うつ薬は、効果発現に2週間かかる。
7.「死にたい」と言っている患者さんには、「死にたいくらい辛いですね」と言う。患者さんによっては痛みがとれたら元気になり、死にたいと言われなくなることもある。
8.希望がないという患者さんの質問には、患者の希望は何かを共有する。一見実現困難であっても患者の生きる意味を支えるものであれば、拒否せず支持する。(例)「もっと生きたいのです」「もっと生きたいのですね」
達成可能な目標の設定・実現をサポートとする。但しこの時に注意しないといけないのは、人間ができないことをやると、非人間的なことになる。

 後半は、神田橋條治先生の著書の内容紹介と三木先生ご自身の考えを述べられました。
「技を育む、精神医学の知と技」(中山書店)第十三章 終末期医療から を引用されました。
一、遺す
生の終わりを意識するようになるといろんなものを遺したいという欲求が湧いてきます。
― 中略 ―
死に臨んではことばを残すようにしましょう。送る人はことばを乞い、大切に受け取ることにしましょう。
二、絆
「ひと」
という種は群れ動物ですから、絆への志向は根源的なものです。
― 中略 ―
また絆の原初形は「触れ合い」です。いのちの終わりに際しては、絆の原初の形すなわち「互いに」皮膚が触れ合うことが有用でしょう。つまり触覚が最重要感覚です。
三、進歩
「ひと種」は常に工夫し前進してきました。ファントム(=精神)を生み出したのも画期的進歩です。前向き、工夫、好奇心、日々新た、などはすべてからだの志向に由来しているファントムです。
― 中略 ―
いのちの終わりに近づいてもがいている人に接するとき、それをからだ由来の工夫や前向きの志向の表れと見て協力するのが正しいのです。一瞬の未来にも夢を託すのが、体の志向を素直に反映したファントムの志向なのです。
四、尊厳死
一から三までのすべてが達成されて、それでも、からだのいのちを終えることを選択するとき、それは真の尊厳死です。
― 中略 ―
望ましい姿勢は、ひたすら学ぶ気持ちで対話することです。尊厳死はファントムの領域ですから対話がふさわしい領域です。尊厳死に限らず、臨死の人に接する際は、学ぶ心持がふさわしいものです。必ず学べるからです。

 「改訂精神科養生のコツ」(岩崎学術出版社)第五章 過去をまとめ、未来を目指す を引用されました。

  川の流れのように
― 中略 ―
皆さんがよくご存知の美空ひばりの歌です。この歌詞をよく味わってください。ここに皆さんが自分の過去を振り返り、まとめ、そして未来を目指す際のコツがあります。
― 中略 ―
1.自分史を作る
アルバムの写真を見たり、母校の校庭を歩いてみたりして、空白の時代の思い出を引き出そうとしてみましょう。自分なりの想い出が出そろったら、親兄弟に問うて、その人々の記憶と自分の記憶とを突き合わせてみましょう。ずいぶん違っているのでビックリすることもあるでしょう。そこから自分の歴史の意味づけが変わったりします。この意味づけの変更や新たな意味の創生は自分史作りの重要な機能です。
― 中略 ―
いまの自分が夢にも居たし、昔の自分の一部が今も失われずにここに居るとハッキリすると、「時代を超えてきて、いまも在る自分」がハッキリしてきます。
歴史の流れを貫く自分がハッキリすると、いま・ここでの自分らしい決断や選択がしやすくなります。
2.愛する・夢
人生では愛することが不可欠です。不可欠なのは、愛されることではありません。愛することなのです。そして、愛する相手は、人でなくてもいいのです。生き物でなくてもいいのです。星空を愛して人生を送っても、充実した人生になるのです。神仏を愛しそれを支えに確かな生涯を送った人々は、歴史上にたくさん知られています。わたくしたちは何かを愛している時に、自分の人生を生きているのです。
そして夢をもちましょう。どんな時にも、夢は必要なのです。夢が人を力づけるのです。ですから、夢は死んでゆくときにさえも必要なのです。
― 中略 ―
3.花
愛と夢とをもって、いまを受け入れて未来を目指す雰囲気、を自分の心身にしみ込ませるには、いろいろな歌が役立ちます。歌に親しんで下さい。
花 作詞・作曲・歌 喜納昌吉
― 中略 ―
【連想】
一、精神科の病気にかぎらず、流れが停滞して、もういちど出発するときに、過去に選ばれなかった枝を振り返って眺めてみるとヒントになることが多いのです。そこには、生かされる機会のなかった自分の天分が隠れていることが多いからです。
二、過去を振り返り、そのときの気分を引き寄せることは、それ自体がこころを、ひいては脳を身体を、癒すのです。
三、夢を描くことは、元気を出させます。希望とはそうした夢のことです。夢が破れても破れても、また新しく夢を作り出して生きている人は、いくつになっても若々しくて、精神科の病気を免れやすいようです。そうした人を「くじけない人」と呼びます。
四、過去を振り返る際も未来を描く際も、そこで生きている自分が関わっていた・関わるであろう環境や人々のことを思い描くようにしましょう。
五、多くの人に好まれている歌ではないのに、あなただけが大好きな歌というのは、養生にとって特別に大切な役割があります。

 最後にフロアからの質問がありました。

 質問:末期がん患者さんの「こころのケア」に、それぞれ家族と医療者とくに看護師の立場から、どう対応すればよいのでしょうか?
返答:家族は、患者さんに巻き込まれる。入れ込むほうがいいと思います。
看護師は、患者さんに入れ込むのを避けるほうがいいと思います。余裕を持ち客観性が必要となります。そして、チームで支えることが大事と思います。


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